Release:22.05.20
カフェ・クラッソ
~心の奥の懐かしい風景~

〇月×日
結婚して初めて住んだ山梨で、なぜか懐かしさを感じた小さな町、芦川町。
昔よく行った練馬のおばあちゃんちと同じ空気が流れる町。

誰もが心の奥にもっている、日本の田舎風景…。
それってもしかしたら実際の風景じゃなくて
記憶に残っている体験やイメージが創り上げた心象風景なのかもしれない。

芦川町の「カフェ・クラッソ」は、初夏の日差しをいっぱいに浴びて輝きだすまばゆい緑と生命力あふれる草花のその先に。

築300年の養蚕を営んでいた古民家で、玄関を開けるとゆったりとした広い土間が広がる。
凛とした空気感が、風土に寄り添い紡いできた長い歴史を感じさせる。

靴を脱いで上がると、店内は囲炉裏のあるお座敷席。その奥は民泊スペースになっており、宿泊者はここで朝食をいただくという。

今回は、ワンプレートランチにデザートとコーヒーか紅茶が付くランチコースをセレクト。
デザートは3種類のスイーツの中から好きなものが選べる。
生スフレ、テリーヌショコラに…なんと、私の大好きなクレームブリュレ!
これは迷わずクレームブリュレとコーヒー党の私はコーヒーで決まり♪

山の恵みをたっぷりに受けたワンプレートには、ほうれん草と自家製ベーコンのキッシュに、鶏のガランティーヌ!
鶏もも肉の中にぎっしり合挽肉を詰めた、しっとりガランティーヌはプロの味わいを堪能できる。
季節の手作りソース(取材日はいちご)と楽しめば、上品で華やぐ本格フレンチに~。

キャロットラペ、キノコのマリネの小鉢と、畑でとれたルッコラなどのサラダがどっさり。
毎日ここで焼いているというプチパンはもっちりふわふわ♪

近所の農家さんがつくった山ウドのグラタンは、食感も香りも楽しく、いつものおうちで作るグラタンとは違った、旬の素材に心躍る。

お食事の締めくくりは、いつもほのかな苦みを楽しむコーヒーと魅惑のスイーツ。

パリッと小気味いい音とともに顔を覗かせる、ねっとり濃厚なカスタード。
んんんん~たまらない~。
烏骨鶏の卵を使ったこちらのクレームブリュレは、こっくりとなめらかで、たまごの味が濃く、ほろ苦さと甘みのバランスが絶妙だ。

心もお腹も満たされ、ふと窓の外を見ると、ごろごろと露出した岩肌に、凛と咲く一輪のたんぽぽの花が。
ある写真集の一説を思い出す。
「咲くか 咲かないかは 自分で決める」

ついつい、奇抜なものや目新しいものに目がいきがちで、身近にあるものの価値にはなかなか気づかない。
でも、心を動かす美しい風景は、こんな何気ない日常のワンシーンの中にあるのだ。

連なる山々の中で、積み上げられた石垣と点在する兜づくりの民家。
芦川の古き良き美しい景観は、きっと多くの人の心を満たし、生きるヒントを教えてくれるだろう。
世代を超えて、心の奥に息づく懐かしい風景として…。

-笛吹市


料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。