自分らしくあるために― 
高みを目指し続ける「職人」

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自分らしくあるために― 高みを目指し続ける「職人」
 

坂田ひさしさん(61歳) 甲府市出身 
”SAKATA GUITARS”


日々メディアで見聞きする有名アーティスト。

そこで演奏される楽器に注目したことはありますか?

今回は数多くのギターを世に生み出したギター職人の傍ら、カレー屋“ハーパーズミル”の店主を務める坂田ひさしさんをご紹介します。

 

多くのプロミュージシャンが信頼する
”SAKATA GUITARS”

10~20代の頃はシンガーソングライターを目指し音楽活動をしていた坂田さんがギター職人の道を本格的にスタートさせたのは、40歳を過ぎた2001年。
そのきっかけは奥様の一言だったとか。

「もともとヴィンテージギターが好きで収集してたんだけど、年に7本くらいギターを売り買いしてたら女房に怒られちゃって(笑)。ある時、たまたま足を運んだ御茶ノ水の楽器屋ですごく綺麗なギターがあって、「これ欲しいな」って女房に言ったの。そしたら、彼女は呆れて、「そんなに好きなら自分で作れば」と一言(笑)。そこで自分で作ればいいってことに気づいたんだよね。」

思い立ったら行動の早い坂田さん。
その楽器屋からの帰り道にさっそく材料を揃え、インターネットで情報収集し、1本のギターを完成させます。
そのギターが、『アコースティックギター業界のスタンダード』と言われる“マーチン”よりも音色が良いと大好評。
これを機にさらにギター製作の世界にのめり込み、その才能を開花させていきます。

今では多くのプロミュージシャンから信頼を得る”SAKATA GUITARS”
その人気ぶりは、制作4本目で初めてオーダーが入ってから今に至るまで注文が切れたことがなく、現在年間で8本のギターを制作するほど。
その背景には周囲の人々と環境、そして自身もミュージシャンとして活動してきたことが大きく影響している、と坂田さんは語ります。

「ハーパーズミルでフォークソングライブを定期的に開催してるんだけど、そこにたくさん有名な人が来て、僕の作ったギターを弾き、アドバイスをくれた。オーダーをもらえることもあった。作ったものをただ飾って満足するだけじゃなくて、店に置いたことで色々な人に弾いてもらえるチャンスがあったんだ。

周りの条件が整っていたからここまでやってこれたんだと思うよ。それに自分がミュージシャンだったからこそ奏者がほしい音が何なのか分かるってことも大きいかな。僕より製作技術が高い人は世の中にいっぱいいるけど、楽器はただ正確に作ればいいってものじゃなくて、そこに何かしらの魅力がないといけない。

僕は、まず音楽が第一にあって、その音楽を最高な状態で演奏にするために必要な良質な道具(=ギター)を作っているという考えなんだ。だから僕のエゴは盛り込まない。そういう僕独自のスタイルがあるから、皆わざわざ僕に頼んでくれるんだと思う。」

 

“カレーを売る”というのは“自分の感性を伝える”ということ

もう一つの顔、カレー屋店主としても坂田さんは一切の妥協なし。
その原点には、カレーの修行をした吉祥寺にある店『まめ蔵』での経験があるのだとか。

「そこのマスターは絵画をやりながら、自分のライフスタイルを確立していたんだ。それもただ好きでやってるだけじゃなくて、世の中にちゃんと認められる形で。僕にとって“カレーを売る”っていうのは“自分の感性を伝える”ということとイコール。カレーの味や珈琲の香り、ゆるっと流れる時間やその場所に座ったときの雰囲気、それらすべてにこだわって、自分が納得したものだけを提供してきたからここまでこれたんだと思う。」

しかしそんなこだわりの強い坂田さんですが、カレー屋をスタートしようと思った一番の理由が、“女房といつも一緒にいたいから”というキュートな一面も。
そんな愛の詰まった店で、自分が「いいな」と思うものを提供し自分らしくやっていきたい、と坂田さんは語ります。

 

自分らしく生きるために

『君はどんなやり方で自由になるんだい?』
これは、坂田さんが影響を受けたミュージシャンの言葉。

これまでの活動の中で、つねにこの言葉が指針となってきたと言います。
「“自由”って言うと分かりにくいけど、自分らしく生きるにはどうしたらいいか、そのために時間とか曜日とかお金とかからどうやって自由になるか、その上でどう生活していくかってことを考えています。

でもそれは“すべて自分で決める“ってことだから、目標がはっきりしていないと、どんどん怠けたり感性が鈍っていってしまう。だからいつも自分を律して感性を磨いていかないといけない。そこが一番大変なの。そのためのモチベーションが何かっていうと、ギター製作だったら世界中どこに出しても恥ずかしくないギターを作る、カレーだったら東京のど真ん中でもやっていけるっていう感覚。

「田舎だからこんなもんでいいや」っていう妥協は一切なし。精一杯のことをして完成させたものを、次はもっと良くしてあげよう!と絶えず向上心を持って努力していくんだ。もし僕が妥協した商品を出したとして、それをお客さんが見抜いたら次のオーダーが来なくなっちゃうからね。」

そんな坂田さんの最終的な目標は歴史に残るギターを作ること。
そのために海外進出も視野に入れているんだとか。

「死ぬまでに100本ギターを作れたらいいなって思ってたんだけど、去年の5月にそれが達成しちゃって(笑)。でも最終的な目標は歴史に残るギターを作ることなので、そういう意味では海外進出とかできることはまだまだ色々あるんだよね。海外で認められないと歴史には残れないからね。」

今、ギター制作仲間から海外のショーにも誘われているのだそう。
坂田さんが世界に認められる瞬間を見られるのもそう遠くないかもしれません。

ギター製作にもカレーにも一切手を抜かず、高みを目指すための努力を惜しまない坂田さん。
自分のスタイルを貫き、常に自身を律し続けるその生き様は、まさに『職人』。
今日もハーパーズミルには最高の音楽と絶品カレーを求めて、人々が集います。

SAKATA GUITARS

ハーパーズミル店舗情報



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